日本時間14日AM2時に開発チームによるQ&A配信が行われました。お馴染みのBen Brode氏とゲームデザイナーDean Ayala氏が登場し、コミュニティから寄せられた数多くの質問に応えています。この記事では1時間の配信の中で語られたQ&Aの概要を抜粋していきます。
Developer Insights: Livestream Q&A! [Twitch]
◆ 新規プレイヤーの経験について
新規プレイヤーのほとんどはAI戦とカジュアルを経験しランクプレイへ進む一般的な導線に従っていく。すぐさまランクプレイに挑戦するプレイヤーは僅かであり、少数のそのプレイヤー達は勝率やマッチングに多くの問題を経験している。
ランクプレイはおそらく新規プレイヤー達にとって理想的な環境ではなく、開発チームはカジュアルにおいて初心者同士がマッチングすることでより良い経験が積めるように調整を図った。
◆ ランクプレイのラダーについて
プレイヤーのパフォーマンスで結果が上下するランクプレイの明快なシステムはプレイヤーにとって有益であると考えている。ただし、ラダーはあまりにも神経を磨り減らされるように感じている(特に毎月のランクリセットにおいては)。
同じシステムを維持して問題を改善していくための手をつけやすいところでは、前シーズンの順位に基いてボーナススターの獲得量を増やすことを考えている。
シーズンの期間を長くすることもできるが、1ヶ月の区切りは丁度よいと考えている。
さらに、ある一定のランクへ到達するとそのシーズン中はそのランクから下がらないようにブレイクポイントを設定することも検討している。既存のプレイヤーをランク20から遠ざけることは新規プレイヤーの経験をより良くすることにもつながるだろう。
ただしこれらの修正においてレジェンドランクのプレイヤー数を膨らませたくはない。レジェンドへ到達することの価値を下げてしまうと考えているため。
他にも現在ランク5で停止する連勝ボーナスについても考え直している。
◆ 闘技場(Arena)の改善について
将来を見越した闘技場の改善について数多くのことを計画している。まず闘技場にスタンダードの導入を検討しており、新カードセットの追加がカードプールにおいてより重要になるだろう。たとえば今回のガジェッツァンならば、闘技場でJadeデッキを作ることが出来ればより面白くなる。
コモン(common)の出現頻度を減らすこともできるので、よりバランスがとれるようになると考えている。また、バニラカードの出現も減らしてゲームを揺さぶるようなカードを増やす。闘技場のプレイは構築とは異なるべきだが、マナカーブに沿ったプレイばかりになるのも適切ではないと考えている。
そして2月初旬には公式から闘技場の平均勝率トップ100人のプレイヤーを発表する予定がある。この集計には少なくとも30回以上闘技場のプレイが必要である。
◆ クラシックカードをワイルドへ移すことを検討する場合、以前nerf調整されたカードを元に戻すことは考えているか?
4月のカード調整はスタンダードのメタゲームはを変化させるために行われたが、同時にそれらのカードはワイルドフォーマットにおいてもアンプレイアブルなカードになってしまったことがわかった。良い点悪い点どちらも考えられるが、それらを元の能力に戻すことは混乱を招く可能性がある。
開発チームは今のところ、スタンダードのためにカードをnerf調整するのではなく、そのままワイルドへと移すことに興味を持っている。
◆ ガジェッツァンのメタゲームに満足しているか?
トップデッキと最下位のデッキは内部のメタレポートでは勝率差が3%以内に収まっている。ガジェッツァン初期には実にさまざまな試行が行われ、突出していたPirate Warriorは一時30%の割合まで昇ったもののその後落ち着いてきた。その間にShamanとRogueが海賊/Pirateパッケージを導入して数を増やし、Jade系のデッキも同様に人気がある。海賊/Pirateパッケージを取り入れたデッキは比較的高い割合で安定しており、変化がなければ何らかの対処が必要になると予想している。
人気の低いHunterとPaladinについて。新しいHunterの専用カードは強力なはずだが海賊/Pirateパッケージの速度に追いつくことが出来ていない。Buff Paladinのデッキのひとつは勝率においては成功を見ている。この二つのクラスにはグライミー・グーンズのメカニクスにおいてシナジーを持った様々なカードが追加されており、もう少し長い目で見守る必要があるだろう。もうすぐ《レノ・ジャクソン / Reno Jackson》はスタンダードから脱落し、将来的にJade系のシナジーが増えることは無いからだ。
今後メタゲームの速度がゆるやかになっていく限りこの二つの将来は明るいものであり、もし海賊/Pirateパッケージのデッキが居座るようであれば踏み込むつもりである。
◆ 古いカードの再録(復刻)についてのスタンスは変化していないか?
カードの再録についてはあまり話し合われていない。異なるメタの中で古いカードが再録されることは違った趣きがあるかもしれないが、それが良いアイデアとは限らない。ワイルドフォーマットにおいて同じカードが4枚存在することにもなる。
◆ デッキとラダーについてどのようにバランスを図っているか
かつてのHunterはランクが低いところでは素晴らしいヒーローだったが、高いランクのプレイヤーにとってはそうではなかった。この状況に対して開発チームはプレイヤーのスキルを試すカードを追加して改善を図った。
開発チームは高い習熟度が求められるデッキを作ることに重点を置いており、プレイの簡単なデッキの存在と両立することが重要だと考えている。
◆ Team 5はどのくらい大きくなったか、普段どんな風に働いてるのか
Team 5(ハースストーンの開発チーム)は現在70人を超えており、正式サービス開始から毎年人数が倍増していて今後もさらに増える見通し。
Ben Brodeの日常は全般的なコミュニティについての会議から始まる。会議では次のパッチや長期的な計画、先週からの目標の達成や今週の目指すものについてさまざまに話し合う。Ben Brodeは引き続きチームの様々な人々とコミュニケーションをとっている。
Dean Ayalaは様々なチームと連携をとりながらプレイテストに多くの時間を費やしており、次期カードセットのカードを試すこともある。
◆ 《穴掘りイタチ / Weasel Tunneler》のような特別なギミックのデザインには何か特定デッキの思惑があったか?
競技的に争えるところから外れて、プレイヤーがただ面白いデッキを作るためにデザインされたカードであり、何かの思惑通りに特別なデッキが作られることは好ましいと考えていない。
◆ 健全なメタゲームとはどのようなものと捉えているか、そこに当てはまらない場合の警告を示す兆候をどのように受け取るか
健全なメタを示す指標は様々に存在し、プレイヤーコミュニティの抱く印象や開発チームの感じていること、そして統計をとることも重視している。開発チーム内で数多くのプレイが行われており、内部のメタレポートで勝率に注視している。
勝率が55%を超えるようなデッキは非常に稀であり、そうしたデッキの存在やメタにおいて同じデッキタイプが20%から25%を占めている場合は危険な兆候である。かつてのピーク時にはゲームの40%が《墓掘り人 / Undertaker》を使うHunterだった。
Pirate Warriorは一時的にこの状況へ迫るものだったが、Reno Warlockの増加によってその数を減少させていった。こうしたプレイヤー達の工夫によって補正されることは健全なメタゲームであると考えている。
◆ 内部テストの段階と較べてガジェッツァン実装後の状況に驚いたところは?
開発チームは《忘却王クン / Kun the Forgotten King》のコンボデッキのようなものまで非常に多くのプレイテストを重ねていた。海賊/Pirateの新カードが様々なクラスにおいてここまで強力であったことに少し驚いている。ただし海賊/Pirateカード達がやや強すぎるとしても、《海賊パッチーズ / Patches the Pirate》がウェポンカードを持つ全てのクラスでプレイされていることは、カードデザインの観点から成功と見ている。
◆ ワイルドの現状に満足しているか
さしあたって満足しており、開発チームはコミュニティによるワイルドフォーマットのイベントがもっと開かれることを望んでいる。Blizzard自身が普及のためにアクションを起こす必要もあるかもしれない。
ワイルドは今後のカードローテーションでさらに面白くなっていくと期待している。現在はスタンダードとカードセット二つ分の違いしか無いが、もうすぐ合計5つのカードセットがスタンダードから脱落することになる(BRM/TGT/LOE)。特定のデッキはワイルドでしかプレイできなくなるだろう。いずれは《ドクター・ブーム / Dr. Boom》のようなただ強力なカードが重要ではなくなり、シナジーが最も強力なデッキを作り上げると考えている。
◆ カードテキスト記述の一貫性について
古いカードと矛盾が生じていることは問題視しており、将来的に修正する可能性がある。ただこれは直ちに取り掛かるべき緊急性の高い問題ではない。プレイヤー達が仕組みを理解していれば問題は起こらず、デジタルカードゲームにおいては致命的ではないと見ている。
◆ Paladinのクラスデザインについて
Paladinには数多くのヒーリング能力と、Tokenを生成するヒーローパワーがあり、このヒーローのロングゲームやミニオンのbuffを得意としている。《レノ・ジャクソン / Reno Jackson》がスタンダードから脱落する時には最もヒーリング能力を持つクラスのひとつになるだろう。