本日コミュニティマネージャーのZeriyah氏より、今月末に予定されているアップデート内容が告知されました。このパッチではBen Brode氏が予告していたバランス調整のためのカード変更に加えて、プレイモードを改善するランクシステムの変更が含まれています。
このアップデートは2月末と予告されており、詳細な日程は今のところ明らかにされていません。少なくともBlizzard社主催の世界選手権アジア太平洋の冬季プレイオフが開催される2月26日以降となるのは確実でしょう。
パッチの概要
- プレイモードの改善:
- プレイヤーが特定ランク(15, 10, 5)にひとたび到達したならば、そのシーズン中はどれだけゲームに敗北しても区切りとなるランクから下がらないようになる
- バランス調整:
- 《ちんけなバッカニーア / Small-Time Buccaneer》 ヘルス値が2から1へ減少
- 《精霊の爪 / Spirit Claws》 マナが1から2へ増加
Update 7.1 Ranked Play Changes – Floors
source:
次回のゲームバランスとランク戦プレイの調整 [Battle.net]
アップデート7.1 ランク戦プレイの変更 – 段階の調整
開発チームは日夜、ランク戦プレイをより楽しくする方法を試行錯誤しているんだ。今すぐにできることが1つある。それは、ランクを駆け上っていく過程に段階を設けることで、そこに到達する達成感をより大きくすることだ。様々なデッキを試しやすくなるように 、またランク戦プレイがもっと遊びやすくなるようにランク戦プレイの段階を増やすつもりだ。
プレイヤーは同一シーズン 中、ランク15、10、5にそれぞれ到達することで、以後はそのランク以下に降格しないようになるんだ。現在のランク20およびレジェンド と同様の仕組みをイメージしてくれればいい。例えば、ランク15に到達したプレイヤーは、その後同一シーズン内において 何回負けてもランク16に落ちることがなくなるわけだ。これからはランク戦で新しいデッキを試すのも気軽にできるし、連敗した時のショックも前ほどじゃなくなる――そんな風になることを期待してるんだ。
アップデート7.1 バランス調整
来たるアップデートで、「ちんけなバッカニーア」と「精霊の爪」のバランス調整を行う予定だ。
「ちんけなバッカニーア」の体力が2→1に減少
「ちんけなバッカニーア」と「海賊パッチーズ」の組み合わせは今の対戦 であまりに多く登場してるな。武器を使うクラス、特にシャーマンは、この2枚の組み合わせを使って当然といった具合になってる。対戦 ではいろんな種類のカードを使ってほしいと思っているんだ。「ちんけなバッカニーア」の体力は1に減る予定だ。現在こいつに苦戦しているクラスも、こいつをサメの泳ぐ海に叩き落とすのがより簡単になるだろう。
「精霊の爪」のマナコストが1→2に増加
「精霊の爪」は目立って強力なシャーマンの武器だ。「精霊の爪」はたった1マナだが、「ブラッドメイジ・サルノス」やシャーマンのヒーローパワーと組み合わせることで、使用マナに対して あまりに効果的なミニオン除去能力が手に入る。マナコストを1増やすことで、「精霊の爪」のマナ効率は妥当な範囲に落ち着くだろう。
これらの変更は、2月末頃のアップデートで適用される予定だ。それじゃあ、また酒場で会おう!
nerfの影響はどのように現れるか
今回のカード調整はたった2種類のカードですが、メタに与える影響はかつてないほど甚大なインパクトになるであろうと予想されています。まずガジェッツァンリリース後に海賊の黄金時代を築いた《ちんけなバッカニーア / Small-Time Buccaneer》。Ben Brode氏の言によると、このミニオンと《海賊パッチーズ / Patches the Pirate》のコンビはランク5以上の全てのデッキにおいて50%の割合でプレイされていたとのことです。
《精霊の爪 / Spirit Claws》を使うShamanはレジェンドランク帯で30%の使用率という一大勢力を誇っており、今回のバランス調整はこれらメタゲームの主役達を狙い撃ちにしたものとなるのです。
参照リンク:
ベン・ブロード氏の談話:メタゲームとバランス、そしてシャーマンについて [dojo]
◆ 《ちんけなバッカニーア / Small-Time Buccaneer》は死んでしまうのか
《ちんけなバッカニーア / Small-Time Buccaneer》は海賊/Pirateパッケージを採用するアグレッシブなデッキ達にとって理想的な1ドロップでした。ヘルス2という数値は相手が適切な除去手段を持っていなければ対処が難しく、buffを受けた序盤からの3点ダメージは脅威的です。このミニオンのヘルスが1低下することによってMageとDruid、Rogueはヒーローパワーで対処することが可能となります。
つまり《死角からの一刺し / Backstab》や《生きている根 / Living Roots》・《自然の怒り / Wrath》、《フロストボルト / Frostbolt》といった低コストの除去カードを《ちんけなバッカニーア / Small-Time Buccaneer》で浪費しない選択肢が浮上し、以後に続く攻撃的なミニオンへの対処を容易にするでしょう。
またこのカード調整によって《メイルシュトロームのポータル / Maelstrom Portal》は《海賊パッチーズ / Patches the Pirate》ごと一掃することが可能となり、2ターン目の返し手段としてより重要な存在になります。これは《狂気ポーション / Potion of Madness》も同様。
ゲーム序盤においてはたった1の数値の違いも以後の展開を左右するほど大きな意味を持ちます。ヒーローパワーで処理できてしまうヘルス1という数値ではなおのこと《ちんけなバッカニーア / Small-Time Buccaneer》の採用を見直す理由になるのは間違いありません。過去の傾向を振り返ると、ヘルスがたった1で召喚された次のターン以降に仕事するミニオンなどまともなAggroデッキで採用された試しが無いからです。
考慮すべきはカードアビリティとウェポン使用クラスの相性、そして海賊/Pirateのシナジーです。このミニオン自身が海賊/Pirateであり更に仲間の《海賊パッチーズ / Patches the Pirate》を呼び出す性質はPirate Warriorにとってはいまだ有効なままであると予想されます。海賊/Pirateシナジーの希薄なAggro ShamanとMiracle Rogueにおいてはカードの採用を再考せざるを得ないのではないでしょうか。
◆ 《精霊の爪 / Spirit Claws》の価値はあるか
アビリティ発動の制約があるものの、1マナで合計9点を生み出す強力なウェポンがついにnerf対象となりました。勝利を呼び込むWin Axeこと《烈火の戦斧 / Fiery War Axe》ですら2マナ/6点なのですから異常過ぎるダメージ効率と言わざるを得ません。このマナコスト対比でダメージ量を見比べればいまだ驚異的な数値に留まっています。
しかしマナコストが上昇したことによって、このカードの最大の利点である序盤プレイの柔軟性を大きく損ないます。このカードは1ターン目のプレイ、または2・3ターン目に他のカードと同時にプレイすることで序盤のボード争いに大きく貢献してきたのです。
仮にこのカードがもはや有用ではないと判断されたならば、今後のAggro Shamanは呪文ダメージ/Spell Damageシナジーを諦めJadeカードに望みを託すほかないでしょう。幸いにも既にAggro Jade Shamanはスタンダードな構成であるため、序盤の展開と引き換えに再び《ドゥームハンマー / Doomhammer》へと手を伸ばす程度の対応で競争力は保てるかもしれません。しかし間もなく訪れるスタンダード更新では《トンネル・トログ / Tunnel Trogg》と《トーテム・ゴーレム / Totem Golem》が同時に脱落するため避けられない転機を迎えます。
一方で多くのプレイヤー達はまたしてもMidrange Shamanの時代が来るのではないかと危惧しています。現在この構築スタイルは様々なバリエーションがプレイされており、《ちんけなバッカニーア / Small-Time Buccaneer》を含む海賊/Pirateパッケージやトログ&トーテムコンビすら必要としない構成が既に成果を挙げているからです。
《ちんけなバッカニーア / Small-Time Buccaneer》のnerfによってAggroデッキが競争力を失うのに乗じて、カラザン環境のシャーマンストーンが再来するのでしょうか。
◆ メタに与える影響とメタ圏外のデッキ達
《ちんけなバッカニーア / Small-Time Buccaneer》のnerf調整は海賊/Pirateパッケージを採用するアグレッシブなデッキ達の勢力を後退させることは確実です。この変化はJade DruidやDragon Priest、Anyfin PaladinのようなPirate Aggroに苦しめられてきたデッキにチャンスをもたらします。一方でAggroを捌く能力を評価されてきたReno Mageの立場を怪しくさせるでしょう。
現在のReno Mage、Renolock、Reno Priestの3デッキはAggroデッキへの対応を中心に組み立てられており、仮にAggroの脅威が去ったならばもっと欲張った構成へと変化する余地があります。Shaman、Reno系の3デッキとJade Druid、Dragon Priest、そしてMiracle Rogueの力関係がどのように傾いていくかはAggroデッキの割合がどこまで減少するかによって決定されるはずです。
もしRenolockが頭一つ抜けるとしたならば、《影なる姿 / Shadowform》構成のReno Priestがアンチとしてメタをかき混ぜ面白い環境へと変化していくかもしれません。
さて気になるのはメタの圏外に追いやられているデッキ達の動向です。Pirate Aggroに迫害されていたZoo WarlockやSecret Hunter、そしてグライミーグーンズのデッキ達にチャンスはあるのでしょうか?おそらくここではMidrange Shamanが大きな壁として立ちはだかり、もしこれを乗り越えられなければ次のカードセットまで雌伏の日々が続いていくように思われます。